コール

 先日の夜だった。母からの電話の着信があった事に気づいた。

 翌朝、午前に電話をしてみたが誰も出ない。

 高齢だから、何があってもおかしくない。私だって同じだ。

 考えても仕方ない。何があったら連絡があるだろう。

 頭の隅でそんな事、考えながら過ごしていた。

 今日は、うまくつながった。またそれが不思議に感じた。

 「何か用事があった?」と聞くと

 「ううん暫らく電話が無かったから、どうしてるかと思って。」と母。

 「出かける用事が多くてね。着手した事が落ち着くまではしばらくかかりそうだから。」

 「ああそうなの。」と、母。

 「元気な声を聞けて良かった。桜はもう咲いたんだっけ?」

 「いやあ、まだまだだよ。この間雪が降った。」

 「ええ!そうなの?そんなだっけ!」

 「気温が0度だよ。」

 「あら、そりゃ寒いわ!」

   「お母さんの元気な声を聞いたら安心したわ。」

   「ううんじゃあまたね。」

  電話の声は、幼い頃に聞いた優しい声だった。

  久しぶりに母に甘えられた気がした。

 

 そして、涙がこぼれた。