滔々と

 一日中強い雨が降っていた。

 路地の坂道には、縞模様が描かれ、太い帯のように滔々と流れていた。

 そして不思議だったが、外はとても明るく感じられた。

 心の中にも雨が降り続けているが、明るい未来を暗示しているように思えた。

 

 社会福祉協議会へ不足していた自治会の書類を出す。

 受付の若い女性が「雨の中、お疲れさまでした。」とねぎらってくれた。

 

 その後、事務所で4人分の名刺を作る。

 そこに一人、自治会の女性が現れた。

 私は、慣れてなくて、プリンターの扱いに悪戦苦闘している。

 「名刺を頼まれて、慣れて無くて、、、」

 「大変ですね。」と彼女。

 コピー用紙で一枚プリントするとメールの間違いを発見する。

 「ああ、やっぱり間違えてる!」

 ヒヤヒヤしながらゆっくり確認する。

 彼女は、向かい側で黙って座っている。

 「この場所使いますか?」と聞くと

 「いいえ。」と言ってまた黙って帰って行かれた。

 

 せっかちな私は、理由が必要な人なのかもしれない。

 

 せっかくだから、手伝ってもらったら良かったかな。

 何か話したかったのかも知れない、、。

 黙ってそこに居るだけで良かったのに、、。

 

 流れに乗って行けば良かったと振り返った。

 

 雨は、止まって居た時間が動き出したかのように流れ続けていた。

 思いの中に音楽が流れ出し、人々は歌い出すかのようだった。

 物語は、新しい展開を始めている。