出会い

 その人は、いつも顔を見かける人だった。

 先日、たまたま同じ講座で一緒になったので、声をかけた。

 「あれ〜よくお会いしますね。」

 向こうも驚いている。

 話して見ると、編集の仕事をしているらしい。

 それでまた驚いた。

 私は、

 文章を書いて見てもらうことになった。

 話して見なければ、人としての出会いも無かったと思うと、不思議でたまらない。

Send me !

 友人は、ゴスペルの会に入っている。

 その歌を聞きに行ったことがあった。

 

 先日、彼女と一緒に歩いていると、「ここの店で、舞台用に大きな十字架を二つ買った。」と教えてくれた。

 キリスト教とは何も関係無く、無邪気に話す。そんな彼女のかざりのないところが好きだ。

 

シンクロニシティ

 強い雨のが降る中、友人が「お茶できしない?」と誘ってくれた。

 ちょうど気晴らしをしたかったから、楽しい気分で出かけた。

 子どもの頃のように、雨降りがなんか楽しい。坂道に小川がいくつも流れている。しかし、残念ながらアスファルトだからダムは、作れないなぁ。と思う。

 友人は、物足りなさを誰かと埋めたかったのだそうだ。

 こんな土砂降りの日に、お茶しようと誘ってくれる彼女が好きだ。

 

 辺りは、明るく感じられるが、たくさんの雨が降りしきる。

 近くの喫茶店では、たくさんの人が訪れ雨を楽しんでいた。

 強い雨が洗い流すように降る。2人の気分を写し出す雨のようだった。

滔々と

 一日中強い雨が降っていた。

 路地の坂道には、縞模様が描かれ、太い帯のように滔々と流れていた。

 そして不思議だったが、外はとても明るく感じられた。

 心の中にも雨が降り続けているが、明るい未来を暗示しているように思えた。

 

 社会福祉協議会へ不足していた自治会の書類を出す。

 受付の若い女性が「雨の中、お疲れさまでした。」とねぎらってくれた。

 

 その後、事務所で4人分の名刺を作る。

 そこに一人、自治会の女性が現れた。

 私は、慣れてなくて、プリンターの扱いに悪戦苦闘している。

 「名刺を頼まれて、慣れて無くて、、、」

 「大変ですね。」と彼女。

 コピー用紙で一枚プリントするとメールの間違いを発見する。

 「ああ、やっぱり間違えてる!」

 ヒヤヒヤしながらゆっくり確認する。

 彼女は、向かい側で黙って座っている。

 「この場所使いますか?」と聞くと

 「いいえ。」と言ってまた黙って帰って行かれた。

 

 せっかちな私は、理由が必要な人なのかもしれない。

 

 せっかくだから、手伝ってもらったら良かったかな。

 何か話したかったのかも知れない、、。

 黙ってそこに居るだけで良かったのに、、。

 

 流れに乗って行けば良かったと振り返った。

 

 雨は、止まって居た時間が動き出したかのように流れ続けていた。

 思いの中に音楽が流れ出し、人々は歌い出すかのようだった。

 物語は、新しい展開を始めている。

並木

 駅近くのビルから出て、交差点に向かって歩き出すと、道路脇の並木が青々と立っている姿が見えた。

 その間から、遠くに六本木ヒルズがのぞいている。

 知らぬ間に随分と葉が茂った。

 巷では、パンデミックの恐怖に右往左往していたのに、木立は毅然とした存在感を示していた。

 人々の悩みなんて、まるで無関心であるかのように、

 瑣末なことに振り回されないかのように、

 

  そんな風に生きていたいと思っていた。

 

 地に足がついて居なかった。 

 やはり、大地にしっかりと根を張っているものには、かなわない。

 振り返って、そう思った。

 

コール

 先日の夜だった。母からの電話の着信があった事に気づいた。

 翌朝、午前に電話をしてみたが誰も出ない。

 高齢だから、何があってもおかしくない。私だって同じだ。

 考えても仕方ない。何があったら連絡があるだろう。

 頭の隅でそんな事、考えながら過ごしていた。

 今日は、うまくつながった。またそれが不思議に感じた。

 「何か用事があった?」と聞くと

 「ううん暫らく電話が無かったから、どうしてるかと思って。」と母。

 「出かける用事が多くてね。着手した事が落ち着くまではしばらくかかりそうだから。」

 「ああそうなの。」と、母。

 「元気な声を聞けて良かった。桜はもう咲いたんだっけ?」

 「いやあ、まだまだだよ。この間雪が降った。」

 「ええ!そうなの?そんなだっけ!」

 「気温が0度だよ。」

 「あら、そりゃ寒いわ!」

   「お母さんの元気な声を聞いたら安心したわ。」

   「ううんじゃあまたね。」

  電話の声は、幼い頃に聞いた優しい声だった。

  久しぶりに母に甘えられた気がした。

 

 そして、涙がこぼれた。

 

 

 

なごり雪

 参考資料とともに、メッセージを送った。

「晴れた朝、窓を開けると心地よい風が、木々を揺らしています。」

 友人から「こちらは、名残雪です。こんなこともあります。」と返信がある。

 

 北国では、ゴールデンウイークの最中に雪が降る事もあった。懐かしい郷里の思い出は、一気に蘇る。

 羊蹄山の麓に暮らしたことがあった。毅然とした存在感のある山が目の前にそびえて居た。それは時には、自分の前に立ちはだかる様に圧迫感を感じた。

 1898mあるこの山に3度行った。緩やかなコースを職場の人たちと共に5時間かけて登り、山小屋に泊まった。今から思えば、熟練者の庇護があって達成できたのだと思う。誰か同僚が一緒だったはずだとおもうが、しばらくは思い出せなかった。

 9月になってこの山には、雪が降ったというにニュースを聞いた友人が教えてくれたことを思い出した。それで、登山をしたのは8月の上旬だったのだと振り返ることができた。

 彼女は、2歳くらい年下だった。寄宿舎でいつも一緒に食事をしていた。私は、妹の様に感じていた。そんなことを思い出した。

 私は、脳裏に浮かぶ友人たちの幸せを願い、

今、手術後の病床にある人のために祈った。