並木

 駅近くのビルから出て、交差点に向かって歩き出すと、道路脇の並木が青々と立っている姿が見えた。

 その間から、遠くに六本木ヒルズがのぞいている。

 知らぬ間に随分と葉が茂った。

 巷では、パンデミックの恐怖に右往左往していたのに、木立は毅然とした存在感を示していた。

 人々の悩みなんて、まるで無関心であるかのように、

 瑣末なことに振り回されないかのように、

 

  そんな風に生きていたいと思っていた。

 

 地に足がついて居なかった。 

 やはり、大地にしっかりと根を張っているものには、かなわない。

 振り返って、そう思った。