自立

 10年程前、重度障碍者施設を見学した。そこでは、大学と同じ4年間で人として生きる力を学ぶ。そして人任せにしない生き方を習得して行く。

 20代の女性は、寝返りさえ出来なかった。しかし、訪問ヘルパーやボランティアを利用して、就業も一人の生活をも楽しんでいた。私は、ボランティアで彼女の卒業式の宿泊と会場までのサポートをした。

 私は、彼女の安心のために、入浴の世話などは仕事で慣れていことを話していた。しかし、初めて会う人であることと旅の疲れもあったようで、洗髪だけを依頼された。

 彼女が体の動かし方、髪の洗い方など細かく伝えてくれたので、私も安心して行う事ができた。

 「生まれつきの障害です。身体が小さく筋肉が無く、体重は20Kg代なので、それほど負担はありません。一度横向きに寝かせたら朝までそのままで大丈夫です。」

 今風に言うとアサーティブと言うのか、自分の希望する事を細かく伝え、人には全く負担を感じさせなかった。

 この方を育てたお母さんはすごいなと思ったが、彼女は「それが普通です。」と言った。

 人にちゃんとお願いできる人が、人として自立した人なのだ。